小さな工夫
前立腺全摘除術におけるサントリーニ静脈叢処理法の小さな工夫
三股 浩光
1
,
野村 芳雄
1
1大分医科大学泌尿器科
pp.366
発行日 1999年4月20日
Published Date 1999/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902657
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前立腺全摘除術におけるサントリーニ静脈叢の処理は,Myersのbunching法(J Urol 142:1282-1284,1989を参照)により安全に行えるようになったが,サントリーニ静脈叢の切断時に結紮糸が弛んで滑脱し,出血を来すことがある。サントリーニ静脈叢に小さく針糸をかけると結紮糸が弛むことはないが,すべての血管を結紮できないため,切断時に出血をみることが多い。サントリーニ静脈叢のすべてを結紮すべく吸収糸で大きく針糸をかけると,切断時やその後の術中に結紮糸が弛み滑脱することがある。再度サントリーニ静脈叢にZ縫合を追加したり,連続縫合で止血を試みるが,ときに止血に難渋する症例もみられる。サントリーニ静脈叢への過度なZ縫合は外尿道括約筋損傷にもつながり,術後尿失禁の原因になりうるので,できるだけ一度の結紮で済ませたほうがよい。絹糸を使用するとこのような滑脱は起こりにくいが,術後の晩期合併症として絹糸が尿道膀胱吻合部より尿道内腔に出てくることがあるので,サントリーニ静脈叢の処理は吸収糸を使用すべきと考えている。
筆者らは尿道に金属ブジーを挿入して膜様部尿道側壁を示指で確認し,直針状にした1-0 chromic catgutを尿道に刺入して,サントリーニ静脈叢と膜様部尿道前壁を一括結紮処理していたが(西日泌尿60:528-532,1998を参照),やはり結紮糸が滑脱することを経験していた。
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