増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅵ.メディカルエッセイ
副腎画像診断のpitfall
松田 公志
1
1関西医科大学泌尿器科
pp.270
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902607
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腹腔鏡下副腎摘除術を行うようになって,副腎腫瘍の紹介症例が多くなった。多くは原発性アルドステロン症やクッシング症候群であり,内分泌診断とともに画像診断も確定して紹介されるので,手術予定を組んで手術をするばかりである。また,他病院から依頼を受けて,麻酔のかかった状態で初めて画像と向き合うこともないわけではない。CT,MRIの進歩で診断に問題のあることはほとんどなくなったが,やはり多数例を経験すると冷汗をかくような経験もする。
他院で褐色細胞腫の左副腎腫瘍摘除術を依頼された症例である。左副腎部に2×2.5cmの明らかな腫瘤があり,放射線科医も太鼓判を押している。内分泌学的にも褐色細胞腫である。型通りの経腹膜前方到達法で左副腎静脈を切断し,副腎周囲の剥離を行うが,表面から腫瘍は見えない。「上極の腫瘍で,脂肪に埋もれて存在するのであろう」とあまり深く考えずに剥離を進め,わずかに上極の剥離を残すのみとなった時点で腫瘤のないことに気づいた。再度CTを上下のスライスにわたってよく見ると,腫瘤の2スライス上で脾臓とつながりかけている(図)。あわてて腹腔鏡で脾臓を観察すると一部切痕があり,分葉したようになっている。
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