交見室
ベリニ管癌の診断について,他
魚住 二郎
1
1九州大学医学部泌尿器科
pp.1076-1077
発行日 1996年12月20日
Published Date 1996/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901958
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筆者の施設では,最近,ベリニ管癌と思われる症例を2例経験した1)。1例は下大静脈に腫瘍塞栓を有した症例,もう1例は上行結腸に浸潤した症例で,2例とも浸潤傾向の強い増殖様式を呈した症例であった。この2例は,いずれも組織学的には乳頭状の発育を示し.免疫染色によりPNA(peanut agglutinin),DBA(dolichos biflorus aggltitinin),SBA(soybean agglu-tinin)などの遠位尿細管系のマーカーが陽性を示したことなどからベリニ管癌と診断した。しかしながら,ベリニ管癌の診断にあたっては絶対的な診断の決め手がないことから,いつも頭を悩まされる。その点から,本誌50巻10号の「腎外傷を契機に発見されたベリニ管癌の1例」を興味深く読ませていただいた。
最近は,ベリニ管癌の症例報告を目にする機会が増えてきたような印象がある。これは,ベリニ管癌自体が増えてきたわけではなく,ベリニ管癌を意識した病理診断がなされるようになったからであろう。現在のベリニ管癌の定義には,「遠位尿細管が腎盂に開口する部分のいわゆるベリニ管から発生する癌」という狭義のものから,「遠位尿細管ないし集合管から発生する癌」という広義のものまで解釈に幅がある。また診断根拠に関しても,周辺の正常腎組織も含めての形態学的な診断だけではなく,各種のレクチンを用いた免疫組織学的な検索を加味した診断2)が提唱されているが,確立された診断法がないのが現状である。
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