Coffee Break
前立腺癌脊椎転移の治療のタイミング
三浦 猛
pp.264
発行日 1996年3月30日
Published Date 1996/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901782
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がんセンターでは,緊急手術の機会がほとんどない。しかし緊急の判断の結果で悔やむことがないわけではない。55歳男性。腰痛を主訴に他院受診。前立腺癌骨転移と診断され,当センターに紹介。本人はがんと告知されて,身辺整理のために自宅に外泊中で,家族が来院。ところが入院待ちの間に突然腰が立たなくなったと家族から電話があった。そこで,緊急入院。幸いまだ不全麻痺であった。これなら除圧手術をすれば麻痺は回復するだろうと判断し,ステロイド,女性ホルモンなどの投与をすぐに行わなかった。組織診断がつく前に内分泌治療をしたくないという気持ちがあったと思う。翌日,MRI,ミエログラフィーにて部位診断後に除圧手術,前立腺生検を施行した。その後次第に神経症状が改善し,このまま順調に回復かと思われた。ところが腫瘍マーカー,骨シンチの所見が改善したにもかかわらず,麻痺は完全に回腹せず,悪い事に強度のシビレ感が出現して,坐位も困難となってしまった。モルヒネ投与,放射線治療,神経ブロックでも改善せず,亡くなるまでの約5年ベット上の生活を余儀なくされた。この反省から,組織診断前でもすぐに内分泌治療などを行い,その後の同様な症例は全例麻痺を残さず元気に通院している。一方,同じ脊椎転移でも腎癌では安易に緊急手術をすべきでない。腎癌では,手術以外に有効な治療法がないため,除圧手術にとどまらず,椎体置換などの大手術となり,また大出血などにより逆に麻痺を増強する可能性があるからである。
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