増刊号特集 泌尿器科病棟マニュアル—ベッドサイドの検査と処置・私はこうしている
術前・術後1週間の患者管理
骨盤内手術(膀胱全摘除術・前立腺全摘除術)
藤岡 知昭
1
1岩手医科大学泌尿器科学講座
pp.174-177
発行日 1995年3月30日
Published Date 1995/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901477
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膀胱全摘除術および前立腺全摘除術(恥骨後式)の骨盤内手術において,前立腺尖部の解剖の解明やサントリーニ静脈叢に対するbunching techniqueの導入により,従来,時として困難を極めた恥骨後面および骨盤底よりの止血操作が比較的容易に行われるようになってきている。しかし,未だ多量の出血をきたす症例も少なくなく,精嚢および前立腺はデノビエ筋膜を間にして直腸に接することより術中の剥離操作において直腸損傷の可能性もあり,骨盤内手術は比較的侵襲の大きいものとされている。また,膀胱全摘除術では,何らかの尿路変更術または膀胱再建術を同時に施行することによる手術時間の延長が,腹膜外の手術操作である前立腺全摘除術においては膀胱頸部と尿道の吻合不全および尿道カテーテルの自然抜去の危険性が加わる。よって注意すべき術後合併症は,手術直後では,1)出血および出血性貧血,2)腎不全,3)肺合併症,術後2〜4日目では,1)骨盤内死腔の感染,2)尿路感染症,3)直腸穿孔または修復部の縫合不全,さらに術後5日以降では1)創部感染症,2)リンパ漏および尿漏,3)膀胱尿道縫合不全が加わる。さらに,全時期を通し尿道留置カテーテルの問題,肺塞栓の危険性もある。なお,本稿では,尿路変更術,膀胱再建術について言及しない。
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