Coffee Break
成人の夜尿症は他科疾患に御注意
水尾 敏之
pp.167
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900891
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約10年前の経験です。22歳の男子学生が高校生の頃からの夜尿を主訴に来院しました。当院を受診するまでに大学病院も含む数施設の泌尿器科を受診していました。しかし夜尿は一向に直らないということで,心なしか顔付きがすぐれず,元気も無い様子でした。もとより成人の夜尿症は比較的稀な疾患ですので,その原因を探るために膀胱造影や膀胱内圧測定など痛みを伴う検査を進めなせればなりません。この患者にも一通りの検査をしましたが,異常をまったく認めませんでした。神経因性膀胱ではなく,いわゆる夜尿症と考えました。そこで夜間の水分摂取を控えさせ,三環系抗鬱剤の投与などを開始しました。しかしながら薬剤の種類や量を変えたりしましたが,夜尿症は全く良くなりませんでした。念のため行った脳のCTも正常でした。脳波検査を行ったところ,覚醒時は正常脳波でしたが,睡眠脳波で1度だけスパイクを認めました。てんかん発作による夜尿も否定できないので精神科を受診させましたが,再検した脳波所見は正常でした。患者はその後も夜尿が続くと訴えました。ある時"ところで濡れた下着は誰が洗濯するの"と訪ねたところ,"尿臭はするが朝には下着は乾いている"というではありませんか。変だなと思いながらも念のため,母親に夜尿の有無について確認したところ,夜尿の事実はないと言う返事でした。
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