増刊号特集 泌尿器科治療薬マニュアル—私の処方箋
疾患別薬剤投与プロトコール
感染症
前立腺炎
鈴木 恵三
1
1平塚市民病院泌尿器科
pp.114-116
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900864
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前立腺炎の概要と現況
前立腺炎は40〜50歳代の男性に好発する前立腺の炎症で,そのほとんどは慢性症である。前立腺肥大症,腫瘍,留置カテーテル症例など下部尿路系に基礎疾患のある前立腺炎は,治療態度が異なるのでここでは除外する。急性症は,ほぼ例外なくE.coli,K.pneumoniaeといったグラム陰性桿菌(GNR)による感染症である。これに対して,慢性症では起炎菌が確定できる例は30%前後である。残る症例では,感染性か非感染性か容易に鑑別できないが,非細菌性として治療すべき方が多いものと思われる。この中には,最近の傾向として,性行為に基づく感染,特にC.trachomatisによるものが著しく増加を示している。クラミジア性前立腺炎は30歳以下の年齢層に多いことが特長である。
前立腺炎の治療は,抗菌剤療法とその他の治療法に大別される。急性症は,前立腺の触診でしばしば菌血症を生ずるほど,前立腺実質全域に及ぶGNRの感染で,化学療法の絶対的な適応である.適切な化学療法で1週間程度で有効をみるが,完治するまでにはなお治療の継続が必要である。急性症では,慢性に移行しないように治療を行うことが肝要である。一方慢性症では,半年程度の化学療法を行っても完治する率は30〜40%程度と低い。またいったん治療したとみられる例でも,数か月から1年以内に再発をみることが稀ではない。決め手となる治療手段がないというのが現状である。
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