増刊号特集 泌尿器科治療薬マニュアル—私の処方箋
進歩と新しい展開
漢方薬の適応
会田 靖夫
1
1市立岡谷病院泌尿器科
pp.56-58
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900840
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漢方治療の現況
医療用漢方エキス製剤は昭和51年に保険適用が認められ,以後製品が普及し始め,漢方専門医ばかりでなく一般医家の間でも各科領域にわたり広く使用されるようになってきた。その中で漢方薬だけで専門的かつ伝統的な治療を行っている医師は少数で,大多数は現代医学的な薬品(以下漢方薬に対して洋薬と呼ぶ)と併用したりあるいは患者の症状に合わせて使い分けたりしている。本来漢方治療は患者から得られる情報を「証」として整理し総合する。そしてこの「証」に基づいて使用すべき処方が決定される。この「証」は患者によってそれぞれ個人差があり,さらに病気の進行状態によって変化する。しかし現実には「証」に留意することなくあたかも洋薬の一部を選択するがごとくに風邪には漢方薬A,胃腸障害には漢方薬B,肝臓には漢方薬C,というように画一的に使用されている場合も少なくない。結果的に病気が治れば,その処方を選択する思考はどのような方法でも良いわけであるが無原則的な漢方薬の使用はその効果を十分発揮できない場合が懸念される。現代医学の教育を受けた医師にとって,まず西洋医学的な診察によって病名を決定する。そしてその診断名に対して使用できる漢方薬を処方群の中から選択するというアプローチのしかたが一般的である。そしてその選択の結果使用された漢方薬はよほど患者の病態とかけ離れていないかぎりある程度の効果をもたらすことが多い。
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