小さな工夫
ラットを用いた腹腔鏡下手術,特に鉗子操作のトレーニング
萬谷 嘉明
1
,
黒澤 尚
1
1岩手医科大学泌尿器科学教室
pp.81
発行日 1993年1月20日
Published Date 1993/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900781
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腹腔鏡下手術の操作は,大きく気腹操作と鉗子操作に分けられる。このうち鉗子操作はTVモニター上の2次元像を観察しながら長い鉗子を操る遠隔操作であり必然的に熟練を余儀なくされる。そのため実験動物を用いた日頃の練習が非常に重要であるが,ブタやイヌなどの大型動物を用いた練習を「頻回」に行うことは実際上無理がある。そこで実験動物としては入手しやすく取り扱いも楽なラットを用いることを考えた。
ラットでは当然,気腹操作の練習はできないが,乾式トレーニングシステムを用いることにより,少なくとも鉗子操作,すなわち術者が鉗子の両手操作を自由におこなう訓練,腹腔鏡保持者が手術に最適の視野を提供する訓練,助手が手際よく随意に対牽を行える訓練,およびこれらの連係動作を養う訓練が可能である。手技の概略を述べると,ネンブタール腹腔内投与(0.1ml/体重100g)で麻酔し,腹部を剃毛したラットを,乾式トレーニングボックス内(自作の箱でも可)にしっかりと固定する。実際の手術と同様に,術者,腹腔鏡保持者,助手が所定の位置に立ち,トラカールを通してボックス内に腹腔鏡,鉗子類を挿入する。ラットの腹部を切開した後,両側精巣,腸管,胃,両側腎臓,腹部大動脈,下大静脈の順に,剥離,クリッピング,切断,摘出さらに止血などの操作をおこなう(図1)。以上の行程は慣れると約1時間以内に終了でき,場所もあまり必要とせず連日の練習も可能である。
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