交見室
無形成腎について,他
山中 宣昭
1
1日本医科大学第一病理
pp.266-268
発行日 1992年3月20日
Published Date 1992/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900564
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
本誌45巻7号の「無形成腎より発生した腎癌の1例」を拝読したが,この題に戸惑われた読者も多いのではないかと思われる.形成されない腎から腎癌が発生するとはどういうことなのか.結局これは,用語の定義に関わってくる問題である.紛らわしい用語として,renal agenesis, aplasia, hypoplasia,dysplasiaが用いられており,邦訳では,腎欠損(無発生腎),無形成腎,低形成腎(発育不全腎),異形成腎,などの用語が対応する.このほかdysgenesis,aplastic dysplasiaという用語もみられる.
いずれも先天的形態異常の病態を示す用語であるが,著者らは,無形成腎を,Fortuneら(1927)のaplasiaの定義により,"腎の構成組織は存在していても腎固有のいかなる機能も有しないもの"としている.したがって,無形成腎に存在する尿細管上皮から腎癌が発生しても矛盾はないことになる.『新臨床泌尿器科全書3A』(金原出版,1984)の「尿路の発生と先天異常」の項に,造腎組織の発生異常としてFortuneによる分類が引用されており,agenesis腎欠損,aplasia腎無形成,hypoplasia発育不全腎と分けられているが,著者らはこれに従ったものと思われる.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.