交見室
無症候性褐色細胞腫,他
中田 瑛浩
1
1富山医科薬科大学泌尿器科
pp.283-285
発行日 1988年3月20日
Published Date 1988/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204711
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井上先生らの論文(臨泌,41巻9号)を拝読しました。無症候性褐色細胞腫の取り扱いに関する重要な報告です。高血圧を呈さないことがまず興味をひきます。同様の報告は近年,増加しており,Mederiosら(1985)は26.6%と述べています。これには三つの場合が考えられます。第一は,かつては高血圧を呈した時期があったが,その間無症状で病状に気づかず現在は正常血圧を呈している場合。第二は発作性高血圧があるが,その頻度が低く,血圧測定時には正常血圧で高血圧が見過される場合。第三は,実際正常血圧である場合です。第一の場合は褐色細胞腫が急成長して中心壊死に陥り,エピネフリン(E),ノルエピネフリン(NE)分泌顆粒が減少していることが考えられます。高血圧の持続期間が長かったりすると眼底変化が強いことがよくあります。当症例も壊死物質が腫瘍に充満していたようですが,私も嚢胞性褐色細胞腫で壊死物質が腫瘍の大部分を占めており,正常血圧を呈した例を経験しています。第二の場合は頻繁に血圧を測定し,血圧の変動を把握することが大切です。これには自動血圧計の使用が便利です。第三の場合,著者らは山田氏の文献(外科,37:607,1975)を引用しておられるごとく,カテコールアミンの貯留は十分でも分泌が不十分だと正常血圧を呈するとの理由は説得力があります。
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