日本泌尿器科臨床史・9
欧米の性科学によって評価された日本の装着型陰茎プロステーシス
友吉 唯夫
1
1滋賀医科大学
pp.1066-1067
発行日 1991年12月20日
Published Date 1991/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900500
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インポテンスとか勃起といった話題が続いたので,ついでに陰茎プロステーシスに関係したことを述べておきたい.こんなことのどこが日本泌尿器科臨床史かといわれると困るのであるが,こんにち陰茎プロステーシスが学会でも盛んに討議されているので,その源流を探ってみると,そこに江戸時代の張り形(「はりかた」とも「はりがた」とも呼ばれた)というものが存在するのである.わが国では,この種のものは淫具としてしかみられず,いわばポルノ的興味のみの対象であった.ところが,これが欧米では科学的に評価されたことがあるのである.
20世紀になって欧米では性科学という学問が登場してきた.英国のH.H.Ellis(1859-1939)もその創始者の一人であるが,ドイツがその中心であった.日本では,1922年京都に性学読書会という研究会が山本宣治や安田徳太郎によって形成され,京都府立医大生理学の越智真逸教授もそのメンバーであった,越智教授は当時の性科学の集大成ともいうべきAlbert Mo11編著の"Handbuch der Sexualwissenschaften"(1921)(図1)をドイツから購入して所有しておられた.それが越智教授の女婿の加藤篤二元京大教授のご好意によって私の手元に置かれることになった.この書はMoll,Ellisなど計6名が執筆し,内容は性の生物学から文化人類学にまで及んでいる.
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