交見室
前立腺癌死増加をめぐって,他
岡田 謙一郎
1
1福井医科大学
pp.86-88
発行日 1991年1月20日
Published Date 1991/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900249
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前立腺癌による死亡数は1985年頃から膀胱癌を抜き泌尿器癌のトップとなった.患者実数では後者の方が多いにも関わらずこうなるのは,要するに前立腺癌の方が「臨床的」悪性度はより高いということにほかならない.現在の増加傾向が続き,診断・治療でよほど画期的な方法が開発されない限り,米国ほどでないにしても近い将来わが国の主要な癌死因の一つになるものと予想される.
前立腺癌の死亡率が高いのにはさまざまな因子がからんでいる.最も大きな原因は,治療開始時前立腺癌ではすでに進行病期症例が多いことで,周知のように70%以上は局所浸潤ないし遠隔転移例である.残る30%以下の根治手術適応例のうち,高齢や合併症などさまざまな理由で手術を回避される例は半数を越えるであろう.したがって,現今の癌治療で唯一治癒可能とされる根治手術施行例は全体のたかだか10%程度である.しかも,早期癌として手術を施行される患者の30%以上はすでにリンパ節転移が証明されるか病理組織学的に切離断端陽性であり,大半はいずれ全身性病変へと進展することが知られている.つまり,純粋に治癒手術が施行されるのはほんの数パーセントに過ぎないと言ってよい.
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