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私信として,HoLEP(経尿道的ホルミニウムレーザー前立腺核出術)において,膀胱頸部に輪状切除を加えることで良好な成績が得られることを耳にした.標準的TURPで膀胱頸部の切除については,「膀胱頸部の必要以上の切除は膀胱頸部拘縮を起すことがあるので執拗な切除は不要との意見が多い.著者らは通常は膀胱頸部だけを最初に切除せず,膀胱頸部にかけたカッティングループを一気に精阜の付近まで一筋の切除を加えている.こうした切除を繰り返していくうちに自然に膀胱頸部は全周に切除されていく.その際,輪状線維膜の露出を目安として深く切除しないよう心掛ける.―Urologic Surgeryシリーズ1より」と成書のなかで記載した内容に通じる手法であり,我が意を得たとの思いであった.膀胱頸部の切除は内尿道口の開大が目的であり,同時に,前立腺肥大症の線維筋性型分症と考えられる膀胱頸部硬化症(bladder neck contracture : BNC)の存在を念頭に置いている(土屋文雄説1963年,水本竜助説1964年).
ところで,昨今,BNCの病名を聞く機会が少ない.その原因には何があるのであろうか? BNCは,膀胱頸部の開大不全や硬化狭小(拘縮)化を主病変として,ほかに下部尿路閉塞症状を来すような明らかな器質的疾患を有しないものと定義されているが,本症の病態,病因について統一した見解は確立されていない.内視鏡的には,膀胱頸部の堤防状膨隆・挙上を認め,組織学的には粘膜下の結合織の増生が著明で,筋線維の萎縮膨化など退行性変化とともに間質の線維の増生が観察されている.しかし,このような器質的障害にBNCの原因を求める方向から,機能的失調に主眼を置く考え方に変化してきている.その背景には,尿流動態検査法による病態解析が大きく寄与している.本症は膀胱内圧上昇から最大排尿率が得られるまでの時間,最大開口時間の延長が特徴的であるといわれている.そこで,前立腺肥大症と同様に保存療法としてαブロッカーによる作用が期待されるが,改善効果は決定的でなく,最終的には外科治療が必要になると指摘されている.
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