特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!
企画にあたって
辻村 晃
1
1順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科
pp.617
発行日 2021年8月20日
Published Date 2021/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413207305
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
勃起不全(ED)に対する治療薬としてきわめて高い有効性を有するシルデナフィルの承認後,ED診療は急激に変化を遂げ,はや20年以上が経過しました.その間,EDという疾患が一般社会に広く認知されるようになりましたが,それでもEDを自覚した男性の5%程度しか医療機関を受診していないともいわれています.
ただし最近では,EDを単なる陰茎の病態と考えるのではなくて,全身の血管性疾患の一症状として捉えるようになっています.つまり,動脈硬化により冠動脈や脳動脈が狭窄を来し,心筋梗塞や脳梗塞を発症する前に,さらに血管径の細い陰茎への血流が低下することでEDが発症するという考え方です.EDのリスクファクターには高血圧,糖尿病,脂質異常,肥満などがあり,生活習慣病であるメタボリックシンドロームとの関連性も注目されています.さらに,前立腺肥大症に基づく下部尿路機能障害(LUTS)や前立腺癌に対する治療も,EDのリスクファクターの1つです.また,加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の主な症状として,うつ症状とともにEDが挙げられており,これらの相互関連性も指摘されています.男性不妊症の原因でEDを含めた性機能障害が占める割合は,この20年近くで4倍になっています.すなわち,EDは心血管系疾患やメタボリックシンドローム,LUTS,LOH症候群,うつ症状,男性不妊症のいずれとも関係性が深く,もはや単なるQOL疾患という位置づけではありません.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.