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本書を手にして,まずはその厚さに軽く驚いた.実践ガイドということでポケットにも入るサイズを勝手に想像していたが,252ページのしっかりとした装丁である.もっとも本書がこれだけのボリュームになった経緯には心当たりがある.先日「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス 第2版」が発出されたが,その分量は初版(2017年)の5ページから105ページへと一気に膨れ上がった.とりもなおさず,遺伝子パネル検査の償還や,検査システム・実施医療機関の質の担保,データセンターへの情報集積など,他国およびこれまでのわが国の医療システムでは経験しなかった体制整備が数年の間に急速かつ包括的に進んだことの反映だろう.本書の編者,執筆者の顔ぶれを見れば,上記や日本病理学会などのガイダンス作成に中心的に関与された第一線の医師・研究者,おそらくは相当にタフであったであろう検査システムの申請作業に尽力された診断薬・検査企業の面々である.がんゲノム医療,遺伝子パネル検査を取り巻く諸事情を解説するには最適のチームである.
あらためて内容を拝見すると,予想に違わず体制整備から遺伝子パネル検査の結果解釈に必要な解析学的および臨床的な情報,一般の臨床検査ではなじみが薄いゲノム科学の用語解説,実地で運用中,さらには今後登場する検査システムの紹介と網羅されている.カラフルな図や表も多く,検査レポートの雛形もそのまま掲載されておりわかりやすい.各ページの注釈欄や,ところどころに挿入されるノートも親切である.がんゲノム医療中核拠点病院などでゲノム診療に携わっている方にとって,これだけの情報を手軽に参照できるメリットは大きいだろう.
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