増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識
腫瘍
部位別
膀胱癌:手術治療(TURBTの意義と方法)
藤本 清秀
1
1奈良県立医科大学泌尿器科学教室
pp.40-44
発行日 2020年4月5日
Published Date 2020/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206852
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以前の常識
・従来の白色光膀胱鏡を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)では平坦病変や微小病変を見落としやすく,筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)では高い術後再発率を示した.そのため,術後再発予防治療としてリスク分類に応じた膀胱内注入療法を行うことが推奨されていた.
・T1 high grade腫瘍や広汎な多発腫瘍では,不完全切除に終わったり,筋層浸潤を評価できなかったりすることが多く,術後4〜6週で2nd TURを行うことが強く推奨されていた.
・従来のTURBTでは切除した組織に熱変性が加わり,切除片は断片化しているため,正確な病理学的深達度診断が得られない場合があった.
現在の常識
・光力学診断(PDD)や狭帯域光観察(NBI)など分光画像処理技術を用いたTURBTの術中補助診断は,上皮内癌(CIS)や微小腫瘍の検出を向上させ,より確実な切除が可能となり,術後再発率を低下させる.さらに,適切なリスク分類に応じた膀胱全摘除術や膀胱内注入療法が選択可能となっている.
・T1 high grade腫瘍の主腫瘍周囲には高率に娘腫瘍が存在するため,初回TURBTにおいて広いマージンと確実な筋層の切除を行えば,必ずしもすべてのT1 high grade腫瘍に2nd TURは必要ではない.
・TURBO(経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術)は病理学的深達度診断が正確であり,さらに腫瘍細胞の腔内播種のリスクも軽減する可能性がある.
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