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院内で抄読会を行っている消化器外科医なら,Michitaka Hondaの名前を一度は目にしたことがあるだろう.ステージⅠ胃癌の腹腔鏡手術と開腹手術のアウトカムを観察研究で比較し『Annals of Surgery』に掲載された有名なLOC-1 studyをはじめ,数々の一流誌に質の高い臨床研究を報告している気鋭の消化器外科医である.今回,「『…先生,手術は成功ですか?』こんな質問にどう答えますか!?」という帯の文句に思わずひかれて,本書を手にとった.外科医がこれまで何となく曖昧にしてきた「手術のアウトカム」をどう評価すべきかを論じた,本多通孝先生渾身の著作である.
数ページも繰らないうちに,私は読むのを止めた.本書は前作,『外科系医師のための手術に役立つ臨床研究』(医学書院,2017)の続編になるが,前作を読まずして本書を読み始めることがすごくもったいなく感じたからである.世上,臨床研究について書かれた本や医学統計の入門書は多いが,前作では外科医がとっつきやすいClinical Questionを例に挙げ,それを洗練されたResearch Questionに変え,臨床研究の定石であるPECOを組み立てながら研究のデザインを磨き上げていく過程がわかりやすく述べられている.ありがちな探索的研究の著者曰く“ダサい”抄録が,仮説検証型研究のポイントを絞った科学論文にみるみる変貌していく過程は圧巻である.ただしPECOのうちP,E,Cは何とか設計できても,いつも行き詰まってしまうのがO,すなわちアウトカムであり,それをどうやって測定するのかが本書のテーマである.アウトカムは患者目線に立たなければ意味がないが,主観的要素が大きいため,それをデータ化するのは実は大変難しい.良い尺度が見つからなければ自分で作らなければならない.こうしたアウトカムそのものを深めていく作業は,実は手術を受ける患者さんの生の声を形にする,外科医としての本質的な研究となる.本書を読み終えると,それが著者の一貫したメッセージとして伝わってくる.
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