書評
—加納宣康(監) 本多通孝(編)—外科専門医受験のための演習問題と解説—第2集
天野 篤
1
1順大大学院・心臓血管外科学
pp.593
発行日 2018年5月20日
Published Date 2018/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212035
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われわれが専門医を取得したころの知識習得方法は,主として臨床の現場で先輩医師の教えを素直に聞き入れて,疑問に感じることや患者さんの容態が思うように改善しない場合に教科書を開くという手続きだった.その上で,所属学会雑誌,海外の専門領域雑誌を読んで,日頃の診療,地方会での症例報告,総会での発表に励み,現場と学会の場で打たれ強くなっていることが実際の執刀医になるための必要条件で,この点に関しては,それほど施設間格差がなかったように感じている.さらに外科認定医(当時)取得に際しての試験は2人の試験官による口頭試問だけだったので,系統的な学習はしなくても抄録集の作成が完了すれば試験の合格は手中に収めたも同然だったように思う.
しかし,1990年ごろからの情報伝達形式の進化によって,外科医の修得すべき知識も増加してきた.さらに2000年以降,インターネットとPC環境の普及・進化に伴う情報処理の加速は最新知識の公平な取得を可能にした.以前には地方の病院勤務では購読して送ってもらわなければ読めないような海外の雑誌が電子書籍として簡単に読めるようになって,YouTubeなどの動画環境の向上により,静止画からイメージを膨らませて行ってきた手術技術も,世界の第一線レベルでの実際が見られるようになった.さらには低侵襲化による鏡視下手術の方法が普及したり,医療安全への一層の配慮などが外科医の世界でもいろいろなことを大きく変えたように思う.
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