特集 あなたは考えていますか? 前立腺癌検診・生検・治療のQOLと費用対効果
企画にあたって
伊藤 一人
1,2
1医療法人社団美心会黒沢病院
2医療法人社団美心会黒沢病院・予防医学研究所
pp.1041
発行日 2018年12月20日
Published Date 2018/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206438
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近年の前立腺癌の検診・診断・治療システムの進歩は目覚ましく,米国ではすでに,前立腺癌の年齢調整死亡率は1990年代前半から4半世紀の間に約50%も低下しました.本邦における前立腺癌死亡率は近年ようやく横ばい傾向になりましたが,米国のような大きな低下は認められていません.一方で,米国において前立腺癌死亡率の低下が得られる過程で,過剰診断・過剰治療・治療に伴う合併症によりQOLが低下し,不利益を被った検診受診者・前立腺癌患者が,ある一定の割合で存在します.
前立腺癌検診・診断・治療までの前立腺癌診療システムを積極的に国家レベルで導入すれば,大きな前立腺癌死亡率低下効果が得られることが無作為化比較対照試験で証明されました.しかし,前立腺癌診療のすべての段階において,個々人の重視しているQOLや価値観に寄り添った診断・治療介入を医師が怠ると,QALY〔質調整生存年(健康な人と同等のQOLを維持しての生存年)〕は目減りしてしまいます.
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