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今年の第111回米国泌尿器科学会議(AUA Annual Meeting 2016)は,2016年5月6〜10日までの5日間,カリフォルニア州サンディエゴで開催されました.今回が初の海外での学会発表ということもあり,印象記を書かせていただきます.私が所属する慶應義塾大学からは計18演題が採択され,大家教授を筆頭に計13名で参加させていただきました.余談ではありますが,私は11歳までロサンゼルスに住んでいたこともあり,サンディエゴは幼少期に何度か父の仕事で連れて行ってもらった思い出の地でもありました.自分のゆかりの地である場所に再度足を踏み入れることは特別な思いがしました.胸が高なる気持ちを抑えつつ,5月6日にサンディエゴ空港に到着しました.私が知っていた空港とは異なり,綺麗に整理されており,時代の流れを改めて感じました.
空港から開催場所はタクシーで約15分程度と非常に近く,すぐにダウンタウンであるガスランプ・クォーターに到着しました.街は小さいながらも活気があり,野球場も近く,なんといっても海が目の前に映る光景はアメリカのスケールの壮大さを物語っていました.早速開催場であるコンベンションセンターに到着し,レジストレーションをすませた後,好物であるアイダホ牛のハンバーガーを食べに行き,至福の一時を過ごしました.その後,コンベンションセンター内を探検しました.コンベンションセンターは主に2つの大きなドームを中央でつなげた形をとっており,中央でレジストレーションなどの基本的な事務手続きができるようになっており,それぞれのセッションホールが遠くなりすぎないよう工夫されていました.また,建物は1階が“science and technology hall”という巨大なスペース内に医療機器メーカーや製薬会社の各ブースがひしめいており,2階がposter/podium sessionで各分野に割り振られ,各部屋で熱い議論が繰り広げられている状況でした.私は2日目に発表を控えていたため,耳を慣らすために前立腺癌のシンポジウムに参加しました.そこではIMRTや小線源治療後にPSA再発した症例をロボット支援下や腹腔鏡下で前立腺全摘除術を施行してよいか否かの議論が活発に行われていました.日本では双方の治療法の導入が米国に比べ比較的最近であったが故に再発する症例はまだ少ない一方,米国はこれらの一次治療を行った患者の救援治療として外科的介入が安全に行えるかどうか,また長期治療成績や予後に関してどうかの白熱した議論が交わされておりました.私が何よりも驚いたのは,予想に反して放射線治療後のロボット支援下/腹腔鏡下前立腺全摘除術の手術結果がよいことでした.放射線施行の影響による高度の組織癒着や脆弱さを考えると,放射線治療後の手術を行うのには戸惑いがある一方で,提示された周術期合併症や出血量,手術時間は思っていたよりも成績がよく,現在のエネルギーデバイスを用いれば一部の患者にとってみればサルベージ療法としての手術も正当化される可能性があるのではと思いました.また,医療機器の展示場では日本では見ることのない,ロボット手術機(da Vinci)の後継機となる単孔式da Vinciの展示も行われており,泌尿器科が今後の超低侵襲手術をリードしていくと確信を得ました.
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