交見室
慢性尿閉の膨胱内圧と臨床経過
徳中 荘平
1
1旭川医科大学泌尿器科
pp.448
発行日 1987年5月20日
Published Date 1987/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204500
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本誌41巻2号掲載の田中正敏先生らの「慢性尿閉の膀胱内圧と臨床経過」を拝読いたしました。論文の要旨は,前立腺肥大症による慢性尿閉を検討したところ膀胱内圧検査上,低コンプライアンス膀胱と高コンブライアンス膀胱の2型に分けられ,低コンプライアンス膀胱にのみに水腎水尿管症がみられること,前立腺切除後の排尿状態の改善は,低コンプライアンス膀胱で顕著であるのに対し,高コンプライアンス膀胱では不良であるとのことで,Mitchcllの説を再確認したものと理解しました。私は,旧中先生のように,実際に前立腺肥大症の慢性尿閉の前立腺切除術前後に膀胱内圧を測定して検討したことはありませんが,日常の臨床上,確かに,症例により前立腺切除後の排尿状態の改善に差がみられます。今回の論文で,症例により,術後の排尿状態に違いがみられる理由を膀胱機能の面から明確に示していただき感銘を受けました。
田中先生は,慢性尿閉の際の水腎水尿管の発生機序として,低コンプライアンス膀胱における高い静止膀胱内圧により,代償能力の低い尿管腎孟が容易に拡張すると明快に説明しており,膀胱尿管逆流(VUR)に続発する水腎水尿管の存在を否定しています。しかし,Hutch1)が25年も前に指摘しているように(前立腺肥大症を含む)下部尿路通過障害の肉柱形成の著しい膀胱でVURを認めることがあり,その多くのものに傍尿管膀胱憩室(Hutch’ssaccule)を伴います。
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