特集 薬物療法マニュアル
Ⅰ.救急患者の薬物療法
7.腎・尿路系
尿閉
橋本 良博
1
,
郡 健二郎
1
Yoshihiro HASHIMOTO
1
1名古屋市立大学医学部泌尿器科
pp.86-87
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903785
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基本的な事項
尿閉とは排尿が不可能となり,膀胱内に尿が充満した状態であり,溢流性尿失禁を伴うことが多い.全く尿を排出できない完全尿閉と,残尿は多いが少しは排尿できる不完全尿閉がある.急性あるいは慢性尿閉という分け方もあり,急激に尿閉になった場合には激しい尿意と膀胱部の疼痛を訴える(急性尿閉)が,尿閉状態を徐々に生じた場合には疼痛,尿意をほとんど訴えない(慢性尿閉).無尿との鑑別が大切であるが,徐々に膀胱拡張をきたし,慢性の経過をとって尿閉となった場合には強い尿意を訴えないことがあり,無尿と誤診されるので注意を要する.脊髄損傷や腫瘍に起因した神経因性膀胱以外は泌尿器系の疾患がほとんどである.男性に多く,原因は前立腺肥大症,前立腺炎,前立腺癌,膀胱結石,高度の尿道狭窄,尿道断裂,尿道損傷などがあり,処置の上からも男性が重要である.多くはカテーテル挿入が可能であって,尿の排出がみられるが,尿道狭窄,尿道損傷のときには挿入できないときもある.そのような場合には膀胱が拡張していることを確認の上,下腹部正中線で恥骨直上を長針で穿刺して排尿を試みなければならない.女性でも直腸癌などの骨盤内手術後や糖尿病による神経因性膀胱で尿閉をきたすことがある.前立腺肥大症の患者がアルコール多飲後(前立腺がさらに腫脹),感冒薬,胃薬の内服後(抗コリン作用など)に急性の完全尿閉をきたして来院する例が多い.
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