文献抄録
閉塞性前立腺疾患による膀胱尿管逆流
pp.324
発行日 1985年4月20日
Published Date 1985/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204023
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膀胱尿管逆流(VUR)は小児や女性にはしばしば見られ,その治療成績の報告は多いが,前立腺疾患によるVURの報告は少ない。著者らは22年間に788例のVUR症例を経験しているが,このうち15歳以上の男性は122例で,閉塞性前立腺疾患に起因したと考えられる37歳から81歳までの症例は53例で全体の6%であつた。53例のうち肥大症45例,前立腺癌8例である。
閉塞性前立腺疾患は,尿管口近位の利尿筋の肉柱形成を促して尿管口の弁作用を障害する。また尿閉度の進行につれて所謂Sacculeの形成と憩室を形成するのでVURは更に増悪する。高度の場合には内視鏡的に憩室内に尿管口が見られたり,X線で憩室内に結石形成が認められる症例もあり,VURの程度は更に高度となり腎機能は強く障害されるようになる。著者らの53例の症例では,grade Ⅰ〜Ⅱの軽度逆流は29例で,grade Ⅲ〜Ⅳの高度逆流は24例であつた。また臨床的に急性腎盂腎炎の症状を呈した例は6例,X線上慢性腎盂腎炎の変化が認められた例は10例であり,grade ⅣのVUR 3例では腎機能は高度に障害されており,腎摘出を余儀なくされた。
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