Japanese
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講座 性行為感染症(STD)の診断と治療
II.ペニシリン耐性淋菌
Diagnosis and Treatments for Sexually Transmitted Diseases (2):Penicillinase Producing Neisseria Gonorrhoeae
小野寺 昭一
1
Shoichi Onodera
1
1東京慈恵会医科大学泌尿器科学教室
1Department of Urology, The Jikei University, School of Medicine
pp.113-119
発行日 1985年2月20日
Published Date 1985/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203974
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はじめに
淋菌は化学療法が導入された初期の時代には多くの薬剤に高度感受性を呈していたが,penicillin(PC)が淋疾の治療に使用され初めてから10年後の1950年代の中頃より徐々に感受性が低下する傾向がみられ,PCに耐性を示す株も出現するようになつた1,2)。しかし,これらの淋菌のPC耐性の多くは染色体性の変異によるものであつたため,PCの投与量の増加を計ることにより治療上の対応を行つてきた3,4)。このことは,PCが淋疾の治療に導入された初期には15〜20万単位の投与量で十分な治療効果が得られたものが5),近年は480万単位という大量のPCGにプロベネシッドを併用するように治療方針が修正されていることからも理解できる6)。しかし,1976年,Phillips7), Ashfordら8)により,イギリスとアメリカでほぼ同時期にpenicillinase producing Neisseria gonorrhoeae (ペニシリン耐性淋菌;PPNG)が報告され,急速な世界的拡がりがみられたことより,penicillinを中心とした淋疾治療の危機を迎え,疫学的な面からも性病対策の原点に立ち返させる程の重要な問題を提起することとなつた。
わが国においては,1979年にPPNGの最初の報告がみられ9),その後,年々分離頻度の上昇傾向が続いているが,これは最近のわが国における淋疾の再増加の傾向と一致している10,11)。
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