手術手技
追加発言・1—腎盂形成術をめぐる二,三の問題
池上 奎一
1
Keiichi Ikegami
1
1熊本大学医学部泌尿器科学教室
pp.222-223
発行日 1982年3月20日
Published Date 1982/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203308
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腎盂形成術は施行頻度の高い手術ではないが,小児の先天性水腎症が対象となることが多く,その場合成人とは多少異なつた配慮が必要である。
水腎症に対し腎盂形成術を行うか,腎摘除術を行うかは,主として病腎の残存機能の程度や回復の見通しが判断の根拠となるが,実際に当たつては適切な基準はなく,選択に迷うこともある。小児とくに幼児の場合には腎の再生力が予想以上に強いので,腎実質の萎縮や腎機能障害がかなり高度と考えられた場合でも,尿流障害の除去によりある程度まで腎機能の回復をみることがある。したがつて小児の場合には,その後の長い生存期間に対側腎の病変が起こることも考慮し,片側であつても腎摘除術は止むを得ない場合に止め,なるべく腎盂形成術を行つた方がよいと考えている。両側の場合には,たとえ一側の病変が高度で他側が軽度でも,腎摘除術は極力避けるべきである。いずれにせよ,腎摘除術か腎盂形成術か迷う場合には,原則として後者を選択することにしている。なおただちに腎盂形成術を施行するのが困難な場合には,腎機能の保持ないし改善のため,一時的に経皮的腎瘻術を造設するのも良い方法である。
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