交見室
前立腺癌患者における病相の数量表示,他
島崎 淳
1
1千葉大泌尿器科
pp.706-708
発行日 1981年7月20日
Published Date 1981/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203186
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
上記についての本誌35巻第5号掲載竹内弘幸氏の論文を興味深く拝見しました。病状や検査所見を数量的に表示し,ある時点における症例間の比較をおこなつたり,同一患者の経過や治療による反応をみることができれば報告者間の客観的な評価が可能になるわけで,多くの泌尿器科医が望んでいたことと思います。このようなことは述べやすくして,実際に作るとなるときわめて難しい問題が多いため,尻ごみをすることになるわけですが,竹内弘幸氏が提案を出されたことに敬意を表する次第です。
癌の経過の多様性ということをみても,前立腺癌はもつともいろいろな経過をとり得ると考えられます。予後とよく相関するものとして,stageやgradeがいわれており,さらには転移形式や癌による他臓器への被影響性,たとえば水腎などが合意されていたといえましよう。ところが本論文では原発部位にあつては量的の大きさを指標とし,転移巣についてはその存在と活動性を含めた障害度をみて生命の余力を算出するようにされています。したがつて同一患者の経過を考えるとき,この価の変動から疾患の増悪をよくみることができましよう。しかし,同一の生命の余力の価を示しているものが,同一の経過をとるかどうかということは別の問題となるわけで,おそらく異なるということが十分予想されます。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.