Japanese
English
綜説
細菌の薬剤耐性メカニズム
Mechanisms of Bacterial Drug-Resistance
横田 健
1
Takeshi Yokota
1
1順天堂大学医学部細菌学教室
1Department of Bacteriology, School of Medicine, Juntendo University
pp.523-533
発行日 1981年6月20日
Published Date 1981/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203156
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はじめに
泌尿器科領域は感染症と縁が深い。他の体液と異なり,尿は適当な塩濃度と有機物を含み細菌の増殖に適している上に,食細胞や補体による感染防御機構がほとんどないためであろう。その上留置カテーテルなど異物を長時間装着する必要がしばしば生ずるので,これが感染症の成立を助長する。
細菌感染症に対する化学療法はほぼ完成の域に達しているが,サルファ剤が発見され,ペニシリン(PC)が実用化されて以来,約半世紀経過しているので,その間に耐性菌が増加し,難治性尿路感染症として,治療に困難をきたしつつある。その対策として,理論的には遺伝学的に耐性菌の発生を防止する方法と,生化学的に耐性菌のしくみを明らかにし,薬剤を耐性菌にも効くように改良する方法の二つが考えられるが,耐性菌発生の遺伝学的しくみは多様であり,それを防ぎ得る実用策は見出されていない。現在はもつぱら薬剤を耐性菌にも効くように改良する方法が主役となつている。しかし,多くの努力にもかかわらず,すべての耐性菌に効くような万能の薬剤が開発されているわけではないので,起因菌ごとに,耐性菌の現状を考え,適当な薬剤を選択することが現時点では重要である。ここでは尿路感染症における耐性菌増加の遺伝学的しくみと,耐性菌における生化学的変化を明らかにし,薬剤選択の参考としたい。
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