今月の主題 実地医のための臨床細菌学
抗菌剤感受性と耐性
β-lactamaseと薬剤耐性
横田 健
1
1順大細菌学
pp.997-999
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207945
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はじめに
ベニシリン類(penicillins:以下PC)とセファロスポリン誘導体(cephalosporin derivatives:以下CES)は,細菌特有の細胞壁主成分ムレイン(murein)の生合成を阻害して抗菌力をあらわすので1,2),作用点をもたない動物細胞にはほとんど影響を与えない.そこで,これらの薬剤はアレルギーの注意をすれば最も副作用の少ない化学療法剤として,今日広く臨床医学に応用されている.しかし,近年それに対する耐性菌が増加しつつあり,感染症の治療が困難になってきた.
PCとCESはその化学構造の中にβ-lactamと呼ばれる環状の部分をもつので,β-lactam drugと総称される.β-lactamaseというのは臨床材料など自然界から得られるPC,CES耐性菌が作る酵素で,これら薬剤のβ-lactam環を加水分解により開裂し,抗菌力を失わせるものである(図1).
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