交見室
腎血管性高血圧について,他
仁藤 博
1
1武蔵野赤十字病院
pp.386-387
発行日 1978年4月20日
Published Date 1978/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202542
- 有料閲覧
- 文献概要
本誌32巻2号「腎血管性高血圧の診断的検討」(藤岡先生)には単純な偏側腎主動脈狭窄だけでないむずかしい症例が示され,本疾患のもつ多様な問題点を示した秀れた論文と思いました。この中に私は,「高血圧症」それ自体としてのむずかしさがあるように思うので以下に述べ,これらに興味をもたれる諸先生の御批判がいただければ幸いです。
要点は,高血圧の発症機転はなんであれ,いつたん「高血圧症」としてある期間持続した場合に高血圧症のもたらす二次的変化,すなわち主として血管に及ぼす硬化性変化が重要な意義をもつてくる,と言うことであります。そして腎血管は高血圧によつて重大な影響をうける臓器の1つであります。かつまた,主動脈狭窄のある側の腎よりも,むしろ狭窄のない側(正常側と一般に呼ばれているが)の腎血管が強い影響をうけると考える説は,やはり正しいと思うのです。したがつて,狭窄のない側の腎血管像の詳細なevaluationは極めて重要で,この点の記載のない論文が多いのは不思議です。疑わしい場合は,更に,狭窄のない側の腎生検による評価も考慮すべきではないかと思います。手術によつて高血圧が改善するかどうかについて諸種の検査法がありますが,このfactorは最も重要な1つであり,なによりも,高血圧が全身疾患であるという認識の上に立つことがessentialです。ことに技術的に狭窄側を摘除しなければならない例では,この点の考慮が重大です。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.