文献抄録
腎皮下損傷の保存的治療について
pp.595
発行日 1977年7月20日
Published Date 1977/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202389
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腎の皮下損傷に際して積極的に開腹手術をすべきか,保存的に経過を観察すべきか必ずしも意見の一致を見ていない。著者らは1964年より10年間に85例の腎皮下損傷を治療してできるだけ保存的治療をすることが望ましいことを強調している。著者は損傷症例をIVP所見から3群に分類し,1群38例(45%)は腎盂像に異常を認めない軽症例,2群44例(52%)は腎盂像に相当の異常所見(後記)の認められるもの,3群3例(3%)は腎実質破裂,腎門血管断裂の重症例とした。第1群の腎盂像に異常のない症例は安静臥床のみで治癒。第3群の重症例3例中2例は失血によるショック状態で入院24時間以内に腎摘出術施行,1例は経過観察したが入院3目後に腎摘を行なつた。第2群の44症例については保存的治療の適応例であるが,受傷直後のIVP像から更に6群に分類観察した。1群13例は腎内血腫,血液・尿溢流あるいは腎変形の認められるもので,4例に動脈撮影を施行し1例に腫瘍を考えさせる所見があり開腹したが,他の12例は安静保液などで治癒した。2群10例は腎盂像が出ないかまた僅かに排泄の認められたもので,保存的処置のみで合併症もまつたくなく治癒。4例の動脈撮影像でも特に異常所見はなかつた。3群8例は腎外への溢流著明であつたが腎破裂像は明らかには認められないもので,このうち2例は発熱脊部痛のため入院後5日目に開腹drainageをおいて治癒した。他の6例は保存的治療で治癒。
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