Urological Letter・169
Ⅰ.X線学的には小欠損像で,実際は腎盂に拡がつていた癌/Ⅱ.腎の腫瘤の鑑別診断に眼よりも手の方がベターか
pp.225
発行日 1975年3月20日
Published Date 1975/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413201934
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73歳の婦人に右側腹部痛と肉眼的血尿が起こつた。第2回目の肉眼的血尿が出た時,膀胱鏡検査をうけたところ,右尿管口から血尿が噴出していることがわかつた。排泄性腎盂像で,右尿管始部に充盈欠損らしいものが認められた。この所見は逆行性腎盂撮影で確認された。おそらく尿酸結石だろうということで2週間尿のアルカリ化を行なつた。尿からの細胞診は陰性であつた。尿のアルカリ化のあとで撮つた逆行性腎盂像でも充盈欠損像は依然として存在し,かつ前よりも小さくなつていなかつた。腎盂と尿管始部の移行部を切開してみると乳頭状のものが現われたが,すぐひつこんでしまつた。しかし,腎盂鏡で確認された。腎盂鏡を入れる前に腎盂粘膜をみると粗糙に見えた。腎盂の切開創を閉じて,根治的腎尿管全摘をした。病理学者の解答は分化程度の低い移行上皮癌で全腎盂・腎杯に拡がつていたという。この所見は初めのX線検査の時の陰影欠損—このときは直径1cm以下だつた—とドラマティックに違つているものであつた。したがつて,保存的手術を企図しても,腎盂・腎杯粘膜が粗糙なときは広汎な新生物であることを指示していることもあるわけである。こんなときは,保存的手術をするか根治的方法を採るかを決めるために粘膜の生検を,凍結標本でただちに組織学的に決めることが絶対必要である。
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