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はじめに
被殻は投射線維や多種の回路などが経由し,さらに近傍にも多くの線維が通ることから被殻出血は臨床上多彩な症状を呈する.Chungら1)は,急性期のcomputed tomography(CT)とmagnetic resonance imaging(MRI)を用いて線条体出血に対して血管支配をもとに6分類し,症状の相違について述べている.さらに6分類のなかでも,外側と後外方に血腫が拡がるタイプが半数以上の約54%を占めていたと報告している.このタイプは両者ともに外側レンズ核線条体動脈の支配である.Ghettiら2)は,この動脈は直径100〜140μmと細く,かつ中大脳動脈から直角に分岐しているため,圧がかかりやすく高頻度に出血すると述べている.このため臨床上,被殻出血のなかでもよく経験するタイプである.
脳血管疾患では脳画像を読影し,症状や予後を予測したうえで理学療法評価を行う.ここ数年でリハビリテーション機器や技術の発展により,症状が重度な症例の介助量は軽減し,在宅生活に戻る症例が多くなった.回復期リハビリテーション病棟の視点から,症状が軽度な症例は問題にならないが,高次脳機能障害や重度運動麻痺の症例が在宅や施設などで自立して歩行するか否かを見極めることは難しい.脳画像で予後を予測できれば,重症例に対して運動療法の計画を早期に計画でき,これまで歩行や介助量軽減に至らなかったケースの機能を改善することに力を尽くすことができる.しかしながら,脳画像による予後の予測に関しては定量化されていないことが多く,漠然とした予測にとどまっているのが現状である.
そこで本稿では被殻出血でも頻発する血腫が外側または後外側に拡がる症例に着目した.当院回復期リハビリテーション病棟に入院した患者のCT画像を用いて,被殻出血のなかでも血腫が外側と後外側に拡がる患者を対象に,後方視的な研究結果を示し,画像の特徴と予後予測を症例を通じて比較し紹介したい.さらに重度被殻出血例に対して,画像所見を分析し治療した結果,見守り下で歩行し自宅退院できた症例の理学療法も紹介する.
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