Japanese
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特集(増刊号の)3 小児の泌尿器疾患
Ⅱ.病因と治療
夜尿症の心理学的・精神医学的諸問題
Psychological and Psychiatrical Problems on Nocturnal Enuresis
平井 信義
1
Nobuyoshi Hirai
1
1大妻女子大学家政学部児童学科
1Department of Paedology, Faculty of Domestic Science, Ohtsuma Women's College
pp.71-79
発行日 1970年12月25日
Published Date 1970/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413201070
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はじめに
夜尿症は,今日の科学的接近からすれば,いまだに本態のはつきりしていない症状の一つである。実に多くの子どもが,そしてその母親や保育者が,夜尿症で悩んでいるにもかかわらず,原因が明らかにされていないし,治療法も確立されていないのである。したがつて,医師もまた,夜尿症の患者に訪問されると,あれこれと治療をしてはみるが,決して確信に基づいてはいない。その間にあつて,劇的な治療効果のあがつた例を経験するから,また妙である。そのような経験は,一時的に,医師の気持を鼓舞し,しばらくの間その効果を挙げた治療法に固執し,その理論的展開を試みる。そのようにして発表された論文の数は非常に多く,治療剤の数に至つては数百種類に及んでいる。しかし,それらは決定的・永続的な効果をあげず,次第に無効例が多くなるにつれて,その治療法は次第に用いられなくなつている。以上の状態がくり返されてきた中で,各種の民間療法が行なわれ,その効果が宣伝されるという状況にある。
夜尿症の治療に当つた医師の多くが,劇的な治療効果をあげたという経験を持つていることは,非常に興味深いことである。その点をもつと追究してみなければならないが,そのような経験が一般化されず,夜尿症に対する決定的な治療法にまで発展しないことは,夜尿症の複雑さを物語つている。夜尿症で悩む者は依然として多く,相談に来る人々も跡を絶たないのが現状である。
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