特集 不安とからだ
自閉症児にまつわる身体的諸問題
平井 信義
1
1お茶の水女子大学
pp.26-29
発行日 1966年10月10日
Published Date 1966/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203755
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はじめに
自閉症児の問題がとり上げられるようになったのは,わが国では1953年以来であるが,ジャーナリズムに取り上げられ,一般的に問題となったのは,ここ数年のことである。したがって,医師の間にも未だじゅうぶんに認識されていない傾向にある。自閉症を世界で最初に報告したのは,アメリカの精神医学者カナー(Kanner, L.)とオーストリアの小児医学者アスペルガー(Asperger, H.)であり,1943年に両人は全く別個に論文を発表した。両人の自閉症に対する考え方にはかなり大きな差があるので,2つの考え方をめぐって,特にヨーロッパでは各種の論争を巻き起こし,今日にいたっている。
自閉症とは,他人との感情的な親近関係を結ぶ能力に欠陥がある点で,基本的な欠陥を持っている。症状が重い時には,両親とも感情的な交流さえなく,両親と他人との区別もつかないことさえある。人間との交流に対して無関心であり,関心をもっていてもそれは機械的でありオートマティックであったりする。それ故,多くの子どもが友人にも関心を示さない。水とか穴とかくるくる廻るものに興味をもち,興味を持ち始めるとそれに固執して,同じことを繰返して倦きない。その執着の度合は著しく,それを妨げると,爆発的に怒り,ぴょんぴょんと跳んだり,金切声を立てたり,疳癪を起こしたりする。
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