--------------------
Huggins教授の思い出
岡本 良平
1
1東京医科歯科大学産婦人科
pp.177-179
発行日 1967年2月20日
Published Date 1967/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200109
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1941年Huggins教授は,「前立腺癌は成熱した腺上皮のovergrowthであるから成熟前立腺上皮と同じ様に,もしandrogenが減少するか,または不活性化された場合は萎縮するに違いない。」という説を立て,そして前立腺癌患者に去勢あるいはestrogen投与を行いこの考えの正しいことを実証した。いわゆるホルモン依存癌(Hormone Dependent Cancer)に対するホルモン療法の始めである。この新しい療法はその後前立腺癌患者に対して効果のあることがひろく認められたが,しかしこの効果が単に一時的なものに過ぎないこともまた明らかとなつて来た。すなわち副腎に由来すると思われるandrogenが再び腫瘍を増悪させる事実を知つたのである。そこでHuggins教授は1945年に始めて前立腺癌患者について両側の副腎摘出を行つている。しかし当時は副腎Corticosteroidを副腎摘出後の患者に充分投与することが出来なかつたため手術後の延命効果はみるべきものがなかつた。ところが充分な量のCortisone投与が可能になるとともに,この手術が前立腺癌に対してまことに有効であることが確認され,1951年Huggins教授によつてこの旨報告された。教授はシカゴ大学病院において1951年から1955年の5年間に,去勢およびestrogen治療後の前立腺癌患者30人に対して両側副腎摘出の手術を行つている。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.