特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術
■膀胱の手術
084 膀胱全摘除後に閉鎖神経麻痺が出てきた
安部 崇重
1
Takashige Abe
1
1北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科学分野
pp.227-229
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102332
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Q 膀胱全摘除術後の閉鎖神経麻痺の症例。手術の際,神経には注意しており,切離はしていない。CTでは,神経周囲の血腫を認める以外に所見はない。
[1]概 説
周術期の神経障害は,幸いなことにその発症率は低く,発生するほとんどの症状は,積極的な治療を必要としない一過性の知覚鈍麻や,神経根症状,軽度の知覚や運動障害であることが多い。しかし稀には種々の機能障害を生じ,患者のQOLを低下させることがあることをよく認識しておく必要がある1)。
閉鎖神経は,第2~第4腰神経の腹側枝のanterior devisionからなる。大腰筋内において1つになって下行し,仙腸関節の高さで大腰筋の内側縁から現れる。内腸骨動脈,尿管の外側を走行し,閉鎖溝を通ってこの中で前・後枝に分かれる。前枝は股関節に関節枝を送った後,外閉鎖筋前方を経由して大腿に入り,短内転筋前方と恥骨筋,長内転筋の後方の間を走行する。走行中に長内転筋,短内転筋,薄筋,稀に恥骨筋に枝を与え,最終的に大腿内側中央部の皮膚を支配する。後枝は外閉鎖筋を貫き,短内転筋と大内転筋の間を通り,外閉鎖筋,大内転筋,時に短内転筋および膝関節支配の関節枝を出す2)。
閉鎖神経の障害により,鼠径部,大腿内側部の疼痛,知覚異常を生じることがある。運動障害として,股関節内転に障害を生じ,歩行障害を生じる可能性がある2)。前立腺癌に対する開放骨盤内リンパ節郭清においては1,681例のレビューで11例(0.7%)の閉鎖神経障害の報告がある3~6)。また前立腺癌に対する腹腔鏡下骨盤内リンパ節郭清においても434例のレビューで2例(0.5%)の報告がある7~11)。
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