特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
肺・縦隔手術
誤つて左房を損傷してしまつた
長田 博昭
1
1聖マリアンナ医科大学第3外科
pp.848-849
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208713
- 有料閲覧
- 文献概要
左房壁の状態や損傷部位,それに心嚢との関係,肺静脈結紮・切断の前後等により対応も少々異る.左房は通常低圧であるから軽い圧迫で止血出来そうに思えるものの,実際は湧出する血液のため出血部の視認が困難で手こずるものである.とりあえずガーゼを硬く折りたたんだものを充て,手指圧を予想出血部付近に広目に掛けて吸引しながら手指の位置を調整し,止血に努める.この間に別に3-0プロリン,テヴデク,絹糸等を用意するが,両端針付きプロリンが使い易い.左房壁や隣接する心膜等の組織が脆弱であれば予め両端の針をTeflon feltから作つたプレジェットに通しておき,対称に受ける方のプレジェットも用意しておく.
次の判断は直接縫合に進むか鉗子を掛けるかである.損傷が小さく,肺静脈の展開もほとんど出来ていないようなら直接指尖での圧迫に切り替え用意した両端針を水平マットレス状にやや大きく掛ける.プレジェットの使用で糸がしつかり締められるようになるから,余程正常で展開の良い左房壁を相手にする時以外出来るだけ使うようにしている.針は圧迫指尖の下をくぐらせる気持で創縁を大きく掛ける.1針で不十分なら2針目を同様に掛けるが1針目の結紮した糸を牽引して鉗子を掛け得るようになることもある.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.