書評
「人は死ぬ」それでも医師にできること―へき地医療,EBM,医学教育を通して考える―名郷直樹 著
奥野 正孝
1
1鳥羽市立神島診療所
pp.1059
発行日 2008年12月20日
Published Date 2008/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101619
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台風を避けて朝早く島を出て,母校へき地医科大学での「離島医療」の講義に向かう新幹線の車内でノートパソコンを開いた。いつもこの時間は授業内容を推敲するためのとても大切な時間であるが,その前にこの本を一気に読み切ってしまったのがいけなかった。本のことが頭から離れない,というより何かが脳の中にしみ渡ってしまって,いつものように働いてくれない。なぜだ? 15号車11番E席の窓から,かつて著者がいた作手村の山々が見えている。できすぎている。
たかだか500人しかいない島の診療所での勤務が通算17年を越えた。これだけいれば,何だって知っているし,何にでも対処できて,迷うことなんかないようになるだろうと思っていた。でも結果は逆で,知れば知るほど知らないことは増えていくし,対処できることが増えていくのと同じようにできないことが増えていく。迷いなんて日常茶飯事,いったい自分の頭はどうなってるんだ,どこがいけないんだと自問自答の毎日が過ぎていた。
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