書評
「人は死ぬ」それでも医師にできること―へき地医療,EBM,医学教育を通して考える―名郷直樹 著
飯島 克巳
1
1いいじまクリニック
pp.80
発行日 2009年1月20日
Published Date 2009/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101641
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何だ。どういう意味だ。書名をみてそう思った。本を読んでいくうちに,その疑問が解けた。著者が責任者を務める地域医療研修センターでは,地域医療の特徴の第一として,「万物は流転する」を挙げている。つまり,人は死すべき存在であるという事実をまず踏まえるのである。したがって,この事実を踏まえて医療を行うということは,患者を見捨てない態度を取り続けることになる。患者に対して,「医学的にこれ以上できることはありません」とは決していわない。その代わりに,「何かいうべきこと,やるべきことがある」と考えるのである。
地域医療の次の特徴として,「あらゆる問題に対応する」ことが挙げられている。つまり,患者のあらゆる必要に応えるということである。決して,専門外であるという理由をもって患者を拒絶することはしない。そのために,「多様な視点」を持ち,「患者のナラティブ―物語り」を聴き,「専門科や専門職の種類」を超えて対応するのである。このように地域医療とは,人々に寄り添う医療であるということがわかる。
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