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従来,医師の臨床研修において,病棟での患者さんへの医学的対応ができるレベルの能力が備われば,それで十分であり,外来診療に関しても問題なく行えるものと考えられてきており,わが国の多くの病院や大学で行われている臨床研修の大部分の時間は病棟を中心に費やされているのが現状です。したがって,大多数の医師は外来診療についての系統的な研修を受けずに臨床研修を終了し,その後,外来診療の現場で自己流の診療スタイルを身につけていると思われます。しかし,入院患者は,すでに入院の対応・目的が決定されており,病棟での研修のみでは,初診の患者さんの診断や治療の仕方を学ぶことはできません。とは言え,すべて臨床医は,多様な訴えを持った患者さんに,限られた時間内で対応する基本的診断能力を身に付けることが必須であるという現実に直面します。したがって,研修医は,病棟研修に加え研修病院外来診療,さらには中・小規模病院および診療所などでの臨床研修が必要となってきますが,そのような研修を受けることが難しいのが現状です。
本増刊号は,2005年第59巻増刊号「ここが聞きたい 泌尿器科外来における対処と処方」を全面改訂した新たな企画であり,若い読者・研修医の皆様にとっては,先に述べた不十分な外来臨床研修を補塡できる可能性のある特集でもあると思われます。本増刊号の記述スタイルは,多くの疾患診療ガイドラインで採用されている臨床的疑問に回答する形式,すなわち,一般泌尿器科医が日常外来診療において遭遇している疑問・問題点に関して,各々の領域において幅広い経験を持つ精通者に直接相談し,難題の解答を導きだすことができるような実用的なスタイルとしました。大項目は,1.尿路・性器の炎症性疾患,2.神経因性膀胱障害と尿失禁,3.前立腺肥大症,4.尿路結石,5.腫瘍(外来化学療法),6.内分泌疾患,7.腎不全,8.そのほか,と前回と同様の分類ですが,小項目およびその質問内容に関しては,泌尿器科診療領域の現状に配慮して,大幅な見直し・改訂によるブラッシュアップを行いました。それらおのおのの質問事項に対する回答の執筆は,現在,第一線の医療機関において活躍されている新進気鋭の先生方に新たにお願いしました。各質問の構成は「1.診療の概要」「2.診療方針」「3.対処の実際」「4.処方の実際」「5.ここがポイント」です。
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