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わが国で増加の一途をたどる前立腺癌は,さらなる高齢化社会を迎え国民的な関心事となっています。かつては患者様に前立腺とはなにかを説明することから始めなければならなかった時代を経験している医師にとっては,この数年の変化は予期せぬものでした。前立腺癌の診療は泌尿器科医にとって最も比重の高い疾患であると思います。予後が良好だと判断し,安易に治療を選択する時代ではなくなりました。その理由として,医師が行う治療の選択肢が増加したことだけでなく,情報が氾濫し,さまざまな情報を患者が収集して,医師に説明を求めることが増えてきたことが挙げられます。患者は医療に関する知識は十分ではなく,自分が受けようとする治療の是非を的確に判断できるわけではありません。つまり,医師と患者の間には,経済学上の用語である「情報の非対称性」が存在します。医師は患者の最大利益を考えて治療の選択をするのが理想です。この非対称性のギャップは,患者が巷にあふれている情報を得ようとすればするほど広がっている感があります。このような現状で前立腺癌の臨床を効率的にナビゲーションしてくれる書の必要性を考えて企画しました。本書を利用した結果として,患者がよりよい方向に向かってナビゲートされることを願っています。
例えば早期前立腺癌の治療においても選択肢は多岐にわたり,1人ひとりの患者様に,納得いく治療を提供するためには医師が自覚を持って常に新しい知識を取り入れていく必要があります。日常業務に忙殺され,必ずしもゆとりを持って情報を収集できるわけではないのが現状です。前立腺癌の治療を担うためには,バランスのとれた理解が必要です。診断と治療のみならず,解剖,疫学,発癌・進展のメカニズムなど,雲下に見える前立腺癌ワールドをナビゲーションして,的確な情報が得られるように工夫しています。ナビゲーションを容易にするために論文の最初に「Point」を設けてわかりやすく構成しております。「わかりやすく丁寧に!」をモットーに新進気鋭の先生に執筆をお願いしております。
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