書評
「プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系」―坂井建雄,松村讓兒 監訳
河上 敬介
1
1名古屋大学・理学療法学
pp.206
発行日 2008年3月20日
Published Date 2008/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101361
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まず,本書を開いて感じることは,明晰で洗練された沢山の図譜が惜し気もなく掲載されていることである。本書は,器官系ごとに分類された系統解剖学のなかで,運動器系を中心とした解剖学アトラスという位置づけだと聞いている。しかし,単なる部位ごとのアトラスを寄せ集めた書ではない。特に骨格筋に関しては,すべての部位において個々の筋の位置や形が理解できるように,浅層から深層まで,部位によっては1筋ごとに剝離した図譜が並べて掲載されている。また,他に類を見ない多方向から描かれた運動器系器官の図譜や断面が描かれた図譜が目をひく。これらの運動器系器官の位置と,神経や血管との位置との関係も一目でわかるように工夫されている。さらに,近年のコンピュータグラフィックス技術を活かし,浅層から深層に渡る筋,靱帯,滑液包,骨などの器官の重なりを立体的に描いた図譜も多く見受けられる。われわれ理学療法士は,運動器系,特に筋を治療対象とする機会が多く,どの筋のどの部位に障害が起こっているかを評価しなくてはならない。個々の筋の端から端までの詳細な形や位置を,三次元的に理解しなくてはならない。十分な人体解剖実習が行なわれているとは言い難い現状では,本書が大きな手助けとなるに違いない。
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