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編集後記
藤岡 知昭
pp.80
発行日 2008年1月20日
Published Date 2008/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101337
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平成19年12月8日,小生は岩手県釜石市の五葉山の山林の中で鹿の出現を待ちながら,脱稿日が来週にせまった新年号の編集後記の「構想」を練っていました。先般より,遠くの稜線方向から鹿を追い出す勢子の賭け声とともにライフル銃の鋭い銃声が数発聞こえていました。雪の少ない今年は,高所でも食料を十分確保できるため,鹿がそこに居つき,山から降りてきません。したがって,鹿を撃つことができる確率は,稜線に近い待ち場ほど高率であり,持病の腰痛のため四輪駆動車を降りた地点の周囲に陣取らざるをえない小生にとって,今回の銃声は小生とは関係のない遠い別世界の出来事のように思われました。
そのとき突然,近くの林の中から勢子が放つスラグ銃の銃声の後に「バリ,バリ」というブッシュをかけわける音がし,全力で疾走する真っ黒い物体が目視できました。直ちに愛用のブローニング・ライフル銃を挙銃し,スコープの視野に立派な2段角を持つ雄鹿を捉えることができました。この時点で小生の頭の中は真っ白になり,標的の位置と引き金を引くタイミングのみに集中しました。2発連射の結果,本州鹿としては大物の体重75kgの獲物を得ることができました。そんなわけで,山中での「構想」は完全にぶっ飛び,区切りとして大切な新年号にもかかわらず,このような雑文のみしか書けない自分を恥じています。
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