書評
「基礎から読み解くDPC―正しい理解と実践のために 第2版」―松田晋哉 著
邉見 公雄
1
1赤穂市民病院
pp.50
発行日 2008年1月20日
Published Date 2008/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101326
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この度『基礎から読み解くDPC―正しい理解と実践のために 第2版』が出版された。時宜を得たものと思われる。初版から2年が経過し対象病院も増え,この制度は広がり定着しつつある。見直しや今後の方向を考える際の参考書として,また,新たに導入を検討されているところには座右の書としてぜひ購入をお勧めしたい。
かく言う私も実は初版からの読者であり,DPC導入準備のために職員へ回覧したりと,大変重宝した記憶がある。当時,DPC制度そのものがあまり理解されていない時期でもあり,「患者にとって何の利益もない。院長の経営戦略で導入するのはおかしい」という院内の守旧派的医師に対する反論,説得の理論的な支柱となったのである。著者の“医療の標準化,透明化こそが日本の医療,特に入院医療の質の向上に結びつき,そのためのツールとしてDPCを開発した”というこの数行の文章が私の躊躇している背中を後押ししてくれ,職員の理解も得られ準備・導入へと前進したのである。いわば私の恩人のような書である。特に,各医療職が縦割り的になっている傾向が強い公立・公的病院にあって,本書ではそれぞれの医療職がDPCにどのように関わるかによって全職員に医療の質,経営の質へのプラスアルファの貢献を求められるということが明記されている(第5章)。本院がDPC導入に先立ち薬剤部を始め,臨床検査部や放射線部の24時間体制を整えることができたのも,自治体病院の環境変化もあるが職員の経営の質への貢献という側面もあり,本書の効能が大きく関与しているものと確信している。
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