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第98回米国泌尿器科学会(AUA)は2003年4月26日から5月1日にかけてイリノイ州シカゴで開催されました。今年のAUAほど開催自体が危惧されたり,学会参加の意欲がそがれることは過去なかったのでは? と思われました。全く皆さんご存知の通りですが,イラク戦争とSARSのことです。イラク戦争が始まった当初は学会期間中はまさに戦争真っ最中で,学会に参加できる確率は正直50%くらいかな? などと思っていました。おまけにSARSの問題が出てきて,本当に行けるのか? といった具合でした。しかし予想外のイラク戦争の早期終結にてアメリカ全土のテロ発生危険度も下がり,少し安全度が増した雰囲気になり,問題はSARSだけだからマスクを持っていけば大丈夫かという気になり参加となった次第です(しかし,その後SARSは大問題になりましたが…)。私はユナイテッド航空で関西国際空港からサンフランシスコを経由してシカゴには入りました。思ったほどマスクをしている人もなく,私もマスクはしませんでした。また空港のセキュリティチェックはそれなりに厳しいものの,フライトが遅れるようなことはなく予定通り往復できました。昨年もAUAに行きましたが,ノースウエスト航空が,行きは1時間半,帰りは6時間も遅れてさんざんな目に会いましたので,かえって拍子抜けしてしまいました。今回の会場はダウンタウンからやや離れたところでしたが,学会専用のシャトルバスが7種類のルートで運行されており,それもかなり頻繁に運行されていましたので,非常に楽に学会場に行けました。いざ学会場に着くと,テロやSARSは何のその,あふれんばかりの盛況ぶりでした。この瞬間やっぱり来てよかったと思ったことでした。
さて私が滞在した期間中,印象に残ったセッション,口演,ポスターなどですが,highlightを中心に述べますと,1)PSAのカットオフ値の問題,2)radical prostatectomy時の長期neoadjuvantの効果,3)OABに対するボツリヌス毒素注入療法でした。1)に関して,今やPSAのカットオフ値は,2.5ng/mlと考えさせられる有意義なデータが示されていました。しかしそれをすぐにわれわれの臨床現場に応用できるかということを考えたとき,insignificant cancerの問題,人種別PSAに違いがあるか? という問題が出てくると思われました。2)に関して,結局長期(8か月)neoadjuvantは短期(3か月)に比べ,断端陽性率は下げるものの,PSA再発に関しては差がないということでした。これはneoadjuvant時のspecimen margin statusはもはやなんら意味をなさないということをあえて証明したように思えました。Neoadjuvant時のspecimen margin statusの評価については従来から行われているHE染色のpathology以外に免疫染色,分子生物学的手法が必要だということを認識させられました。3)に関して,われわれの施設でも最近やり始めた治療法です。効果にはすばらしいものがあります。昨年のAUAでも多数例の解析(USA)が報告されており,今やEDに対するバイアグラ(R)にたとえられるのではないかと思われますが,OABの治療法として,抗コリン剤が効かなければBOTOXというように,break throughした感があります。
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