特集 前立腺疾患のすべて
Ⅱ 前立腺肥大症
治療法の選択と実際
薬物療法
α1ブロッカーによる治療
宍戸 啓一
1
,
横田 崇
1
Keiichi Shishido
1
,
Takashi Yokota
1
1福島県立医科大学医学部泌尿器科
pp.104-108
発行日 2003年4月5日
Published Date 2003/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100836
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1 はじめに
前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia,以下BPH)の治療は,これまで基本的に前立腺による下部尿路閉塞を解除することを目的としてきた。すなわち,肥大腺腫の圧迫による尿道閉塞(機械的閉塞),前立腺平滑筋あるいは尿道平滑筋の交感神経 α1アドレナリン受容体(以下α1-ARとする)を介する収縮による尿道閉塞(動的または機能的閉塞)という2つの異なる機序からなる閉塞を外科的切除や薬物により解除してやることが治療の根幹を成してきたといえる。
近年,BPHに対する治療法として従来のものに加えさまざまな低侵襲治療や新薬が開発され,BPHの重症度はもとより,患者の状態や希望に合わせた治療法の選択が可能になってきた。1980年代以降本邦でも外科的治療のgolden standardとなっているTUR-Pの手技および有効性は確立されたものであり,今後も存続していくものであると思われる。しかし,その術中・術後合併症の頻度は決して少なくないこと,高齢者の中には他の合併症のために手術適応とならない場合もあることや患者自身が身体的侵襲の少ない治療法を希望することも多いことなどから,最近では低侵襲性の治療法が選択されることが多くなってきた。そのなかでもα1ブロッカーを第一選択薬とする薬物治療は,中等症以上のBPH治療法のfirst choiceとして広く認知されるようになった1)。
本稿ではα1ブロッカーの主な作用部位である前立腺平滑筋のα1-ARとそのサブタイプ,BPH排尿障害に対するα1ブロッカーの有効性について解説する。
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