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患者 46歳,女性。
主訴 右水腎症を検診にて指摘された。
現病歴 定期検診にて右水腎症を指摘され,2001年11月13日当院を受診した。
既往歴 17歳,虫垂炎手術。1997年子宮内膜症にてホルモン療法施行,1998年10月腹腔鏡にて単純子宮摘除術を施行された。なお,術後に一過性の右水腎症を認めたが,無治療にて改善している。
初診時現症 下腹部に手術痕を認める。腰背部痛や腹痛などは認めない。
受診時検査所見 尿沈渣にてWBC 1~4/hpf,RBC 0~1/hpf,尿細胞診はclassⅠ,血液生化学および血液一般検査は異常所見なし。
画像検査所見 腹部超音波にて著明な右水腎症を認めた。DIPでは下部尿路は造影されなかった。11月20日,逆行性腎盂尿管造影施行にて下部尿管に外部より圧排されるような狭窄像を認めた(図1)。このときの分腎尿細胞診はclassⅠであった。翌日,右腰背部痛と発熱が生じたため,ダブルJカテーテルを右尿管に挿入した。CTにて,狭窄部尿管は全周性に肥厚したようにも見えるが,明らかな腫瘤は認めなかった(図2)。以上から術後の癒着などによる尿管狭窄も考慮し,2002年1月31日,逆行性腎盂尿管造影および所見に変化なければカテーテル抜去の目的にてバルーン拡張術を予定した。しかし,逆行性腎盂尿管造影にて狭窄部の悪化を認めたため(図3),悪性疾患も考慮し,2月15日開腹生検術を施行した。
術中所見 傍腹直筋切開にて後腹膜腔内に到った。尿管狭窄部周囲に腫瘤状の硬結を触知し,周囲腹膜と一塊になって著明な癒着を認めた。上膀胱動脈と思われる動脈を巻き込んでおり,これを切離することで尿管と周囲の腫瘤が分離された。狭窄部尿管および尿管周囲腫瘤を切除し,術中迅速病理検査ではいずれも悪性所見は認めなかった。このため,尿管の端端吻合を加え,手術を終了した。
病理所見 尿管粘膜は萎縮しているが,他に異常なく,尿管外膜から筋層に位置する部位に腺組織と浮腫状の間質成分が認められた(図4)。免疫染色にてエストロゲンレセプターは陰性,プロゲステロンレセプターは陽性であった。
経過 以上から子宮内膜症の尿路再発と診断した。ホルモン療法は患者の年齢および希望もあり施行はしていない。術後,2002年4月11日逆行性腎盂尿管造影施行(図5)。尿管狭窄も認めず,カテーテルを抜去。現在まで水腎症も消失,特に腹痛なども認めていない。
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