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【症例1】
患者 49歳,女性。
主訴 右腎腫瘤。
現病歴 2000年4月,検診時の腹部エコー,CTにて右腎上極に腫瘤を指摘され,当科初診。MRI,ドップラーエコーを行ったが確定診断に至らず,経過観察していたが,7か月後のCT,MRI,ドップラーエコーにて腫瘤の増大(2cm大)を認めたため,腎悪性腫瘍を疑い,当科に入院した。
画像診断 CTにて右腎上極に2.5cm大の腫瘤を認めた。単純CTにて明らかな脂肪成分は認めなかった(図1)。造影CTにて,enhanceされた(図2)。MRI T1強調画像ではiso intensityを,T2強調画像ではhigh intensityを示した(図3,4)。また,エコーでは等エコー像を示した。
以上より,右腎悪性腫瘍と診断した。術中所見にて腫瘍は腎外に突出しており,術中エコーにて部分切除可能と判断し,右腎部分切除術を施行した。
摘除標本 腫瘍は2×1.5cm大で割面は茶褐色を呈していた。
病理組織所見 HE染色にて血管および平滑筋成分は認めるが,脂肪成分は確認できなかった。しかし,紡錘形細胞がHMB-45にて染色されたため,血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)と診断された。
【症例2】
患者 72歳,男性。
主訴 後腹膜腫瘤。
現病歴 2001年4月,検診時の腹部エコー,CTにて左腎上外側に7cm大の腫瘤を指摘され,当科初診。MRIにて腫瘤は脂肪成分が豊富であり,脂肪腫あるいは脂肪肉腫と診断し,当科に入院した。
画像診断 単純CTでは,左腎上外側にlow densityを示すSOLを認めた(図5)。造影CTにてややenhanceされた(図6)。MRIではT1・T2強調画像とも内部はやや不均一で,high intensityを示した(図7,8)。これらの画像上,腎臓の変形はほとんどみられなかった。また,エコーでは全体に高エコー像を示した。以上より,後腹膜に発生した脂肪腫,または脂肪肉腫と診断した。
術中所見 腫瘍は周囲組織と一部やや強度に癒着しており,また,腫瘍の一部が腎実質に入り込んでいるように見えたため,腎臓,副腎を残すことは不可能と判断し,左腎,副腎全摘除術を含む腫瘍摘除術を施行した。
摘除標本 重量は650g。腫瘍は7×5cm大で,割面は黄白色であった。
病理組織所見 HE染色では,大部分が脂肪成分であったが,腫瘍内に尿細管があり,その周囲に血管,平滑筋成分を認め,また,紡錘形細胞がHMB-45にて染色されたため,腎外発育型のAMLと診断された。
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