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患者 88歳,男性。
主訴 右陰囊腫脹。
既往歴・家族歴 特記すべきことなし。
現病歴 2002年3月,家族が右陰囊の腫脹に気づき近医を受診した。右精巣腫瘍の診断にて2002年3月30日に当科に紹介され受診した。
入院時現症 右陰囊内に鶏卵大の無痛性,弾性硬,表面平滑の腫瘤を触知した。表在リンパ節は触知せず。発熱,体重減少はなし。軽度の老人性痴呆あり。
入院時検査所見 LDH:1293U/l(基準値299~610)は高値であったが,腫瘍マーカーのAFP,HCG-βは正常値であった。それ以外の血液化学検査,尿検査は特に異常を認めなかった。
画像診断 エコーでは,右精巣は径3.4×2.8cm,内部は均一で低エコー性であった(図1)。陰囊MRIにおいて約5.0×3.5×3.4cmの境界明瞭なsolid massが認められた。T1強調画像では軽度不均一で,対側精巣とほぼisointensityであった。T2強調画像では不均一なhypointensityを示していた。精巣内に正常部位は確認できなかった(図2)。腹部CTにおいて腎門部周囲を中心に多数の傍大動脈リンパ節の腫大が認められた(図3)。また,左腎下極に径1.8cmの造影効果のある転移性腫瘍が認められた(図3)。胸部CTにおいて多数の縦隔リンパ節の腫大が認められた(図4)。腫瘍マーカーが正常値であり,画像診断的にはセミノーマが最も疑われたが,年齢を考慮すると精巣原発の悪性リンパ腫も否定できなかった。確定診断を得るため2002年4月,右高位精巣摘出術を施行した。
摘出標本 大きさは6.0×4.5×3.0cm,重量は65g。精巣割面は乳白色調,平滑であった(図5)。
病理組織学的所見 Non-Hodgkin malignant lymphoma diffuse large B-cell lymphoma(Rare types)(図6)であった。精索への直接浸潤が認められた。免疫学診断法:LCA:++,UCHL-1:focal+,L-26(CD20):++,CEA:-,EMA:-,keratin:-。
術後経過 補助療法のことを家族に説明したが,高齢・痴呆が認められることを理由に積極的な治療は望んでおらず,補助療法なしで外来にて経過観察をしている。
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